まさかの「戦争花嫁」のお話
有吉佐和子だから、読んでみようと思っただけで
全くの前知識なしで、読み始めました。
まさかの、戦争花嫁のお話。
「戦争花嫁」という言葉は、初めて知りました。
内容を知っていたら、避けていたやろうな。そもそも、進駐軍のアメリカ人と結婚するって、ちょっと頭悪そうな。
けど、全然違う。そんなものではなく。
主人公の笑子は、無理やりでもなく、強く望んでいるわけでもない。けれど、黒人アメリカ兵と結婚します。
途中、何度もやめようと
思いながら読みました。
笑子が、浮かばれる感じが、全くない。
笑子の人生が、望まぬ方向へと、どんどん流れてくのが、読んでいてもどかしく。
この先、笑子が自力で何らかのすごいチャンスを掴んで成り上がったり、
誰かすごい人が現れて、笑子を違う人生に引き上げてくれたり…ということが、ない。
そこにあるのは、笑子がどれだけ努力しても、今いるレベルから這い上がれないという、現実。
それは、黒人とか、日本人という単純な理由ではないんです。
意外に賢明な主人公なのに
その現実に、かなり早い段階で笑子が気付いているところがすごい。
聡明な人なんだなぁと。
だからこそ、夫をあてにせず、自分で生きていく手段をどんどん見出していく。ホントに、次から次へと。
結局、「持つ者」と「持たざる者」の差があって。それが大きくて、深くて、何をどうしても埋められない。
途中、黒人でもエリートのアフリカン二グロとか、日本人の国連で働くキャリア官僚の女性がいたり…。
白人の中にも、イタリア系、そして最下層のプエルトリコ。
同じようなこと、あるよね
自分より下層にいる人を見て、少し元気になる、その感覚。その優越感が、闇すぎる。
夫が、プエルトリコ人の話をすると、ちょっと元気になるところとか。
初対面で、相手が自分より上か、下か、瞬間に見極めようとするよね?これって女性だけかな??
とある会合に出た同僚が、「ハイブラで武装してました」って言うのを聞いて、
なんかモヤっとしたんです。
お高いブランド物って、自分が満足するものでいいやん。
自分が楽しまないで、どうするの?
相手になめられないようにって、思うのかな。
しんどそう…。
笑子の結論
よく小説に出てくるエピソード、
夫が働かない、暴力、浮気性
深刻な病、
悪いヤツに騙される
という類は一切なく。
そして、笑子の生活って、生きるために働いて。ほんとにただ、生きているだけで。
「何のために、生きてるの」
って思ってしまう。
それでも、メッセージはストレートに伝わってくる、これが有吉佐和子が言いたかったことなのかな。
最後、笑子はここから抜け出すという発想から離れて、自分も二グロだと認めます。
これを、開放と取るか、底辺に落ちると取るか。
結局、足るを知るということ?
とても強いメッセージが伝わってきました。
読んで良かった。一切救われるところがなくても、読後感スッキリなんて。