母の遺産

本のこと

二度めなのに止まらない

とにかく、主人公の母親の「ママ」が強烈で

こんな親の元に生まれて、美津紀が可哀そう過ぎる。

そして、初めからずっと、美津紀が体調不良過ぎて、読んでいて辛くなり。


主人公は50代半ば。「50女が」ってやたらと出てくるのですが、

そんなに体調悪くなるものなのかなぁ。

そういえば、伊藤あさこも、「50歳を過ぎると、毎朝起きて『今日はどこそこが痛い』って気付くことから一日が始まる」

って言ってたもんなぁ…

夫に若い愛人がいるのもあって、やたらと「50女」を繰り返す。

今年はマヌカハニースプレーで風邪予防

「若い女ができたからといって妻を捨てるのは、男の人が女の人に犯しうるもっとも重い犯罪ではないか」

                                  ~水村 美苗  母の遺産より~

というところを読んで、思い浮かんだ友人のこと。

30代半ばで付き合い出して、もちろん、結婚も視野に入れてるって気持ちを確認してたくせに、

1年以上ずるずると付き合い。

それから10年くらい経って、結婚したって話がないまま、もう話題に出なくなりました。

私たちの間では、「30歳半ばで付き合って、結婚しないで別れるって、犯罪と同じやで」

と言われていました(女性に結婚の意思がある場合ですが)。


1回めには気付かなかったけれど

夫が美津紀を愛していないという事実に行き当たるところ(しかも新婚旅行中)。

突然旅行先で歌い出す妻を置いて、サッサと歩き出す夫。

誰だって、外で突然歌い出したら引くやん?まだ、「何やっとんねん」って言われなかっただけでも

よかったのでは。

初めて読んだときは、そう思っただけで、美津紀が痛い感じであまり好きなシーンではなかったんです。

今回改めて読んで、

美津紀の違和感、どんなにガッカリしたのかまで、すごく深いところで理解できたのです。

やっぱり、何度も読み返すって素敵☆こんな発見があるのだから。


私が心の中でものすごく大事にしているもの、ことが、理解してもらえない、

無意識のレベルで解かりあえないことってあるのです。

自分のこととして、「あ~、そういうことってあるよねぇ」

と、共感できました。


夫がただの見栄っ張りで、その見栄の延長で美津紀に求婚したと悟ってしまうところ。

だって、育ってきた環境が違うから、しょうがないやん。

そう思えたら良かったのに。そもそも、初めは純粋に夫は美津紀のこと好きだったと思うよ!


結局、無理して一緒にいる必要もないよね。

ちょうどいい時に、若い女が登場し、「向こうから離婚を言い出してくれてラッキー☆」

くらいに思えるところがかっこよかったです。


読むたびに、色々考えさせられて、気付かされる。

年老いた親の面倒を見る、現実の厳しさもあり、

楽しいだけの物語ではないけど、

好きな本です。


母の遺産―新聞小説